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メディカルアイの「診療会議」では、開業医が診療に専念できる環境を整備するため のより良い方法を開業医の皆様とともに考えていきます。

ゴールデン・ウィーク特集
レセプトのオンライン請求について考える 第1回
2009年04月23日

メディカルアイの「診療会議」では、開業医が診療に専念できる環境を整備するためのより良い方法を開業医の皆様とともに考えていきます。
さて、レセプト・オンライン請求については、最近も様々なメディアで取りざたされています。社会的にも関心の高い問題であるといえますが、先生方のご検討状況はいかがでしょうか。ゴールデン・ウィークのお休みにご検討される先生も多いのではないかと思い、今回から3回シリーズでその対応について考えてみることにしました。
第1回目では、レセプト・オンライン請求について最近の動向を押さえておきたいと思います。長年、医療コンサルタントとしてご活躍される成松亮さん(株式会社NTTPCコミュニケーションズ勤務)をお訪ねし、現在の対応状況について伺いました。

診療所のレセプト・オンライン請求実施状況をめぐって

山口: 診療所のレセプト・オンライン請求への対応状況について教えてください。

成松氏: 診療所における平成21年3月末現在のレセプト電算処理システムおよびオンライン請求普及状況は、下図のとおり、レセプト電算処理への参加が25,499(28.7%)名となっています。しかし、そのうちオンライン請求を実施している診療所の数はまだ3,948ヶ所(4.4%)しかありません。

 

図: レセプト電算処理システム普及状況の内訳 (診療所のみ)

山口: 導入は少しずつ進んでいますが、まだオンライン請求への対応が4.4%であるというのは気になりますね。どうしてなのでしょうか。
 
成松氏.: 診療所の先生たちは今まさに、時間をかけて慎重に導入するかどうか検討を進めていらっしゃるのだと思います。その背景には次のような理由があると考えています。

・電子化することで、提出までの作業が面倒になるとの思いや不安がある。

・セキュリティを確保したネットワークを導入する必要がある。それにより一定のコストがかかるが、オンラインで請求することにそれに見合うだけのメリットがない。


山口: 「電子化することで、提出までの作業が面倒になる」とは具体的にどんなことですか。

成松氏: この間お話を伺った先生は、電子化により、提出するレセプトを直接目で確認することができないのではないか、また従来行っていた紙の上に手書き修正する等の簡便な手法がとれなくなって手間がかかるのではないか、といった不安を訴えておられました。これは、今まで慣れ親しんできた仕事の仕方から離れることへの心もとなさが大きいのだろうと思います。本当は、たとえオンライン化されても紙に印刷すればいいだけですから、特別に心配することはないのですが。漠然とした不安を感じていらっしゃるのであれば、その不安は何に由来するのかをはっきりさせることも必要でしょう。


山口: なるほど、じっくり検討していく中で作業面での不安も解消されていくわけですね。
ところでレセプト・オンライン請求対応の実施には、順番で行くと次の3つのステップが考えられます。

1) 手書きレセプトからレセプトコンピュータの導入
2) レセプトコンピュータでのレセプト電算処理(オフライン媒体での提出)
3) レセプト電算処理 (オフライン媒体提出)からオンライン請求へ

このあたりの状況はいかがでしょう。

成松氏: ではステップごとに対応状況をみていきましょう。

1) 手書きレセプトからレセプトコンピュータの導入
当初、コストを理由に躊躇していた診療所も、請求事務の複雑さを緩和し、月末/月初にかかる大きな作業負荷を軽減できることから、導入への気運が高まり、結果として、平成20年3月現在の診療所のレセコン導入率は85%程度に達したと言われています。

2) レセプトコンピュータでのレセプト電算処理(オフライン媒体での提出)
既にレセプトコンピュータを導入していた診療所では、マスタ項目や入力方法の変更等が必要となり、その手間とコストの負担に加え、電子化を進めることへの不安から、レセプト電算処理までの導入はさほど進んでいないのが現状のようです。しかし、これから新しくレセプトコンピュータを導入しようとする場合にはそれほど問題にならないと思います。一方、かなり古いレセプトコンピュータを使用しているケースでは、レセプト電算処理を進めるにあたり、対応していない場合もありますので、業者に確認する必要がありますね。
- H20/3現在の診療所普及率16.5% (レセプト件数では23.9%)
- H21/3現在の診療所普及率28.7% (レセプト件数では38.9%)

3) レセプト電算処理 (オフライン媒体での提出)からオンライン請求へ
オンライン請求を実施するためには、レセプト電算処理をした上で、安全性を確保したネットワークを導入する必要があります。この二重の垣根があるため、まだ数は少ないですが、確実に増えてきています
- H20/3現在の診療所普及率0.8% (レセ件数では1.1%)
- H21/3現在の診療所普及率4.4% (レセ件数では6.1%)

山口: ありがとうございます。まとめますと、まずは「現在の仕事のやり方からみて電子請求の対応に問題が生じないかどうかを考えて課題や不安を取り除くことが大事」だということと、実際に導入する際には「お使いのレセプトコンピュータでレセプト電算処理ができるか確認する」、その上で、「診療所の院内環境に合わせたネットワーク(回線)を選択する」ことが必要なようですね。

次回は具体的に検討を進める際のポイントについて考えてみたいと思います。
 

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