

今回は、新しい診療会議のサービスとして開始した、治療する空間・Cure Art」について紹介いたします。このサービスの企画と提供を行う、クリエイターの関徹郎さんにお話を伺いました。
医療そのものとはまた違う分野ですが、クリニック作りには大切な内容になったと思います。前半と後半に分けてお送りする予定ですが、前半は診療会議で展開するコンセプトについてお話いただきました。
聞き手:
関さん、こんにちは。今回新しくクリニックのインテリアデザインサービスを始めて頂くことになりましたが、着想とかきっかけはどのようなことだったのでしょうか。
関さん:
ホスピタリティやホスピタルの語源はホテルなどとも同じラテン語で、hospes(旅人)だと聞いています。この旅人に食事やベッド癒しを提供する場所、ということですね。私が長年生業としてきたインテリアデザインは、様々な業種でそこに相応しい空間作りをすることで、振り返ればこれがまさにホスピタリティの提案でした。つまり私の仕事も、この語源と同じなんですね。
心や体の癒しを求めて人が集まる場、クリニックの場合は一番に医療を求められるわけですが、私も自らの専門分野で癒しを提供できると考えていました。クリニックのホスピタリティはドアを開けたときから始まりますが、患者さんが診察室に入るまでのホスピタリティは私の仕事だと考えています。

専門的には、クリニックのインテリアは近年どのように変わってきていますか。
インテリアデザインは患者さんだけでなく、そこで働くスタッフにも良い影響を及ぼします。仕事の効率が上がったり、ここで働きたいと思うような効果ですね。
患者側のニーズも確実にその方向に動いてきています。
確かに、そこで働く方も気持ちがいいというのは大事なことですね。
患者側のニーズの変化というのはどのようなことでしょうか。
患者に選択権のある都市部では、その点に気を使うことが特に必要になってきたと思います。
差別化の必要性が高まっていると言うことですね。
他の業界での例がわかりやすいと思いますが、ブティックでは洋服の世界観を表現して美しく見せますし、バーなら照度と素材感でゆったりした時間を演出、エステサロンなら安心感・清潔感が無ければ体を委ねる気持ちになりませんね。このような要素のあるなしで顧客の数は全く異なり、結果的には売り上げに大きく影響してしまいます。これは明らかな事実です。
もっとも、デザインはさらに多くの要素で構成されます。施主の要望はもちろんですが、院長の人柄、地域性、患者の特性なども当然入ってきます。
そして、構成されたデザインを維持していくために必要になるのがルールです。
施工にデザイナーが入らないとルール作りは行われませんから、そのクリニックらしさというものの定義と維持ができません。このルールが個性を作るからです。
確かに個人的な経験を振り返っても空間が人に与える影響は大きいと納得できます。よい印象があればまた行きたくなるし、人に教えたくなります。
難しい質問かもしれませんが、この場合の「個性」とは具体的にはどういうことでしょうか。
評判の理由そのものが個性であると。
そういう気遣いにサービスの本質があり、それもデザイン要素に入ってくる。壁紙の色や家具の選び方だけがデザインではありません。いろいろ考えて、そこから温かい感じが出てきて、やがてホスピタリティに繋がっていく、そういうものだと思います。
今回、診療会議のために提案していただいたプラン「木漏れ日アート」についてお聞かせください。
飾ることを前提とした木漏れ日アートは、壁にかけると爽やかな光があふれて窓になり、窓が出来ることで壁を呼びこみ、波及してそれらに囲まれた空間の雰囲気を変えていきます。その空間の中に包み込まれるのが人です。
アートはそんな効果を持っているのですが、この木漏れ日もひとつの手法ですが、こういった様々な知恵を絞って、先生とともに楽しくインテリア作りをしたいと考えています。
しっかりとデザインルールを作ったインテリアというのは出来上がりも楽しみですが、むしろプロセスが楽しそうですね。
今回はアートを中心とした話でしたが、後半は人間工学やインテリア完成までのポイントなど実務面について伺いたいと思います。